医療現場で白衣の色が白い意味

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病院の先生や看護婦さんの付けている服の色は?と問われたら、幼稚園児でも白!と答えるくらい医師・看護師の制服は白衣が当たり前です。最近では、薄いピンクや水色などもありますが、そもそも医療現場ではなぜ白の制服が選ばれたのでしょうか?そのルーツやきっかけはなんだったのでしょうか?そして、次第にカラフルな色が選ばれるようになったのはなぜなのか考えてみましょう。

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白の持つイメージがきっかけ?

白という色は、他の色全てを均等に持っている特別な色として位置づけられています。その白が病院という特別な現場で人々に与える印象には、次のようなものがあります。1つ目に、清潔感です。光も跳ね返すような真っ白な白衣を見ると清潔な印象を受けます。

白はその色の特徴から、他の色が目立つこともあり、汚れなどがつくとすぐに目立ちます。常に白の状態を保っているだけで衛生面に心がけていることも相手に伝えることができるというメリットもあります。2つ目に、信頼感です。

白は混じりけのない色であることから、心理的に純粋さや誠実さを与える効果もあります。そのため、白衣を身にまとった医師や看護師から誠実に医療に取り組む姿を感じ取り、信頼を与える効果があります。3つ目に、威厳です。

白は色の中で最も強い光をもっています。全ての色を持ち合わせている白は、すべてを受け入れる強い意志を表していると言えます。それに献身的に看護する姿や命と向き合っているという姿勢も加わり、医師や看護師から発せられる言葉一つ一つには自然と重みが出てくるのです。

4つ目に、明るさです。病院はどうしても、血液の赤や気分的に落ち込んだときによく使われる青などといった少し暗いイメージを持たれがちです。クリアな白は、そんな人達の心に光がさすような効果があります。5つ目に、冷静です。

白は雪や氷のイメージにも使われるように冷たい印象を与えることがあります。どんなに周りが情に訴えてもたんたんと仕事をこなしていく姿からは、少し冷たさを感じることもありますが、やはり冷静に物事を判断していくことが求められる医療の現場では良い色かもしれません。

このように、白のもつイメージは様々ありますが、医療現場に白がもたらす効果は大です。日本だけで限定して言えば、白装束など昔から白は身を清めるために用いられてきた色でもあります。そういったイメージも医療現場にぴったりだったのかもしれません。

そもそも白衣のルーツは?

白の持つ色のイメージが医療現場に効果があることは分かりましたが、それでは、いったいいつ頃から「白衣」が広がっていったのでしょうか?また、初めから「白」だったのでしょうか?そのルーツを逆上ると意外なことが分かります。

最初の白衣は、紀元前まで逆上ります。その昔、インドでは人々の治療に当たるものは清潔でなければならないというのが通説で、その一環で白い衣をまとうことが義務付けられていました。なぜ白を選んだのかは定かではありませんが、やはり白の持つイメージは昔から共通だったのかもしれません。

ただし、この風習が現代の医療現場の白衣と直接結びついたわけではなく、医療現場に白衣が登場したのはもっと後のことになります。というのも、西洋ではまた違う慣習から白ではない色が医師カラーとして選択されていたからです。

19世紀の西洋では、医師は黒いコートを着用していました。西洋ではその頃、礼服である黒は神聖な医療現場にふさわしいとされており、儀礼的な慣習が強く影響していたと考えられます。この頃は、衛生面が病気に与える影響についてまだ知られておらず、一般の公衆衛生どころか、病院をこまめに掃除するという習慣もなかったため、医療現場に清潔さや衛生管理という概念がなかったのです。

どうして白衣になったのか?

19世紀半ばごろから医療は科学と結びつき急速に発展・成長を遂げ、医学として確立していきます。この頃に医師が手を洗うようになったとも言われ、衛生の概念が生まれたといっても過言ではありません。そして、衛生管理の重要性が認識されたことと同時に、それまでの黒いコートから白衣へと変革していったとされています。

つまり、もともと医療現場の衣服はその土地の風習や慣習が大きく影響していたが、「衛生管理が病気拡大を防ぐ」という医学の進歩により、自然と衛生面にマッチした色を選ぶようになったというのが白衣の歴史なのです。

なぜ他の色が?白衣が白でなくなったわけ

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このように、長い歴史の中で白衣は「白」と選ばれてきたにも関わらず、最近は様々な色が選ばれるようになったのはなぜでしょうか?衛生面の管理はもう必要ないと病院が言っているように感じる方もいると思いますが、実は、これには「白」のもつ弱点が関わっています。

白は、特定の色を見続けたあとにその色が消えたとき、別の色が残像として見える「補色残像」という現象を強く引き起こすことが分かりました。この影響をもろに受けたのが手術です。手術では、鮮やかな赤色を長時間見続けます。

そのため、白衣や周りが白い環境下で手術中や手術を終えたあと、医師の目に残像が強く残り仕事に影響が出てきたのです。そこで、赤の補色である青や緑色をあらかじめ衣服や周囲に増やすことで、補色残像が軽減されたのを機に、手術室の壁や手術着にも緑色や青色が採用されるようになっていったのです。

つまり、病院として衛生面に気を遣うことが必要なくなったのではなく、よりよい医療を提供するために必要な措置だったのです。気になる衛生面の管理ですが、こちらは、現代医学や技術の進歩もあり、白にこだわらなくても衛生管理ができるようになりました。

実際、一昔前に比べても洗濯機や乾燥機は進化しており、短時間で洗濯を終えることができるようになり、汚れたらすぐに着替えることも可能になっています。

他色でも白衣なのはなぜ?

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さて、この「白」以外の衣服、なんて呼べばよいのでしょう?実は、どんなに色が変わっても医療現場で医師や看護師がつけている衣服は「白衣」と呼ぶのだそうです。どんなに色や形が変わっても、これまでの歴史の中で先人が築き上げてきた功績や「白」の持つイメージが医療現場にもたらした効果から、敬意を払って「白」という名前を残しているのかもしれません。

近い将来、医療現場からは「白」が全くなくなることがあるかもしれませんが、それでも医師や看護師の中で「白」への敬意が消えてなくなることはないでしょう。